コロナを逆手に町内会IT化を目指せ!(書籍紹介)

栄東 お知らせ
2022.10.22


 水津陽子・自治会・町内会負担軽減&IT活用事例ブック2022年7月実業之日本社。この本は、コロナを逆手にとってIT活用による自治会・町内会の機能の刷新、再生を図り、新たなコミュニティ像の創造を目指すものである。
 そして筆者は、新型コロナ禍という困難が時代だからこそ求められるのは「人とのつながり」であると町内会の重要性に対する強い認識と崩壊への危機感を背景にしているような気がする。

 この10年で町内会加入率は、全国で平均7%減少している。一方で、新型コロナを契機に町内会のデジタル化が加速している。でも、高齢の役員ばかりでIT化をどう進めたらいいのかという声もある。しかし、手をこまねいていては、町内会の崩壊につながる、地域社会や住民ニーズも大きく変化し、未婚者が増え、子どもが減り、働く高齢者も増加している。活動を支える退職者、専業主婦も減少し、役員の担い手もいない。それなのに、会議は平日昼間、連絡はいまだに電話やFAX、いわば昭和の時代に飛脚や早馬を使うのと同じ話だ。

 町内会の見直しの方向として、「役員の負担軽減」「不公平感をなくし、満足度を高める」「新たな参加や担い手を呼び込む」「若い世代から団体の信頼性を高める」「活動の原資、財源の充実を図る」と提示し、見直しにはまず会員の意見を聞くところからはじみようという。

 そして、今や60代の7割がスマホを利用する時代、IT化しないことが自治会・町内会の致命的な欠陥となる可能性すら出てくると指摘している。いまや日本の人口の約7割がLINEを活用し、自宅に居ながら会議やイベントができる時代であり、町内会のIT化は存続に不可欠なのである。

 IT活用の進め方として、「①現状把握会員のIT活用度、利用意向、人材の有無を確認」「ステップ②推進体制IT活用を推進する体制をつくり、協力メンバーを募る」「ステップ③活用プランIT化をどのように進めるか、計画を立る」「ステップ④情報発信広く参加を呼び込むため、広報PR活動を行う」「ステップ⑤実行と検証試行して課題を洗い出し、改善する」を提案している。また、目的を明確に、無理しない、無理強いしない、行動に移して継続するのが大原則としている。

 本年3月に公表された総務省の「地域コミュニティに関する研究会」の提言には、「地域活動のデジタル化を進める支援」として、「活動が制限させるコロナ禍はデジタル化の好機」「デジタル化の牽引役として現役世代や若者の参加を促すことも重要」「ニーズと費用負担のバランス、将来のニーズの変化への柔軟な対応等」などを挙げている。

 役員の高齢化や担い手不足を嘆いていても解決しない。札幌市には、まちづくりセンターという独自の制度がある。職員の多くは現役世代で、ITは日常的に使っている。もっているノウハウを生かすことは誰にでもできることだ。86か所もあるまちづくりセンターの真価が問われていると強く感じた一冊である。


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