このほど、総務省の「地域コミュニティに関する研究会報告書」が公表されましたので紹介します(報告書本文、概要版)。
今、地域の様々な課題に対応していく必要性が高まっていますが、町内会の加入率の低下など地域のつながりの希薄化が進み、併せてコロナ禍により活動に制約が生じています。他方、地域活動を効率化し、効果を高める手段としてデジタル技術の活用への期待も高まっています。この研究会は、町内会などが地域社会において変化するニーズに的確に対応していくためにデジタル化にも着目し、先進的な自治体や地域の取組をフィードバックしようと総務省が設置したものです。
研究会では、変化するニーズに対応し、持続可能にするため、3つの視点から現状を分析して、具体的な方策を検討しています。
まず、第一に、住民間や行政との情報共有を効率化して負担を軽減するために、地域活動のデジタル化を推進が必要としています。
第二には、現役世代等の参加促進を図り、担い手を確保し、町内会加入率を向上させる、また、行政の依頼事項や町内会自体の活動内容の見直しによって役員等の負担を軽減していくとしています。
第三には、防災や地域福祉の分野で町内会とNPO、専門家等とのの関係を強化し、様々な主体間の連携を進める重要性を述べています。
具体的には、「地域活動のデジタル化」では、コロナ禍をチャンスにして、財政措置も活用しての自治体の積極的な支援が有効とし、かつ、デジタルとリアルのバランスも重要としてしています。電子回覧版にとどまらず、安否確認や災害時だけではなく平時の活用も提言しています。デジタル化にあたっては、町内会単独ではなく、連合町内会や事業者との連携を進め、行政職員のサポートや現役世代、若者の参加を促すことが重要としています。
次に、「自治会等の活動の持続可能性の向上」にために、地域のニーズに即し、町内会のチラシやデジタル情報は、活動内容・収支、加入のメリット、求められる役割等を丁寧に伝えること、また、学生向けパンフレット、不動産業界との協定、アドバイザーの活用などを組み合わせて実施すること、町内会等の負担軽減には、組織横断的な棚卸の重要性を指摘し、地域担当職員制度の導入などを例示しています。
最後に、「地域コミュニティの様々な主体間の連携」では、主体間の活動実態の「見える化」が重要であり、防災や地域福祉の面で町内会活動の目的を明確にすること、連携のコーディネーターの必要性にも言及しています。
すでに深刻な担い手不足に直面して、こうした取り組みが一朝一夕に根づくには困難が予想されます。しかし、一度壊れた仕組み・組織を再構築することはさらに困難が多いと思われます。単なる提言に終わらせず、それぞれの市町村ができるこから速やかに取り組みを進めていくことが求められていると言えましょう。